PB目標が世界を危機に陥れた

1.プライマリーバランス黒字化目標とは

 プライマリーバランス黒字化目標(以下、「PB目標」)という言葉をお聞きになった事はおありですか?

 正しくは基礎的財政収支といい、毎年6月か7月に政府から発表される次年度予算の基本方針である「経済財政運営と改革の基本方針」に盛り込まれています。

 これが黒字という事は、政府にとっての収入である税収よりも支出(借金)である国債発行額が少ないという事であり、一般家庭に例えれば、借金をせずに年収の範囲内で生活しているという事です。

 一見、無借金で政府運営する事は、良い事のように思えます。

 でも実はこれが日本を滅ぼし、世界をも危機に陥れる、恐ろしい目標なのです。

 

2.政府の財政は一般家庭と違う

 先ほど、あえて政府を一般家庭に例えて話をしましたが、実はこれが大間違いの元です。

 政府と一般家庭の財政は、全く事情が異なります。

 政府には一般家庭にはない「通貨発行権」があるのが、その理由です。

 通貨とは、我々が使っている日本円のことです。

 一般家庭でも家を買うときにローンを組んだりするように、返せる範囲の借金は問題ではありません。

 政府の場合は自分が通貨発行者なのですから、(去年の100倍発行するような無茶苦茶な事をしない限り)国債が返済不能となる事はあり得ません。

 加えて、国債の返済期限が近付いてきたら同額の国債を発行して借り換えをすれば返済期限は無いも同然です。

 適切に国債を発行し、国民を守って国家を繁栄させ、(もし国債を減らしたいと思ったのなら)景気が過熱気味の時に増税して国債を減らす……それが国家財政の在り方です。

 

 近年、これを実行した国家があります。アメリカ合衆国です。

 コロナ禍を乗り切るために減税、給付金を繰り返し、国債残高は3000兆円を超えましたが、経済は世界に先駆けて回復しました。

 そして2022年3月、約120兆円の債務削減を目指すと発表しました。

 前年から検討していた利上げも実現し、景気を抑えるプロセスに入ったと見られています。

 これが、通常の国家財政です。

 

 小学校の時に習った事を思い出して下さい。

「景気が悪い時は減税で景気回復させ、景気が過熱してる時は増税で景気を抑える」

 そう習ったはずです。

 にもかかわらず、何故日本では景気が悪いのに増税が続き、給付金を配布して国民を助けようとしないのでしょうか?

 その答えが「PB目標があるから」です。

 

3.PB目標の危険さ

 「日本は国民一人当たり800万円以上の借金を負っており、破たん寸前である」という話を聞いた事がある人もいらっしゃるのではないでしょうか?

 これは嘘です。政府PB目標を達成する為に増税する為についてるんです。

 800万円という数字は日本の債務残高1026兆円を国民数1億2526万人で割った820万円が根拠となっているようですが、そもそも、この数字は意味がありません。

 我々国民が個人向け国債を購入する事を考えてみてください。

 

 金融機関に口座を作り、代金を払って購入する→毎年利息が入ってくる→満期になったらお金が返ってくる

 

 国民はお金貸してる方ですよね?

 国債は「政府の借金」であって、国民の借金ではありません。

 国民が返済する必要もないし、返済の為に増税される謂れもないのです。

 

 では何故、政府は噓をついてまでPB目標を掲げ続けるのでしょうか?

 正確には分かりません。

 しかし現実として「PB目標を達成しないといけないから」という口実で他省庁の予算要求を断り、国民が困ろうが増税を繰り返し政府支出をカットし続ける者が財務省職員のトップである財務次官になっています。

 その結果、日本の経済成長率はG7の中で断トツ最下位となってしまっています。

 

 私はPB目標を破棄しない限り、日本は滅びるしかない状況にまでなっていると考えています。

 

 2022年2月、ロシアのウクライナ侵攻により、世界は根底から覆りました。

 第二次大戦後以来、大きな戦争はありませんでしたが、それが偶然であり、平和など来ていなかった事を、知らされたのです。

 ここで良く考えてみてください。

 もしも日本がきちんと経済成長し、それに伴って防衛費を上げていたら、ロシアはウクライナとの戦いに集中できたでしょうか?

 日本のGDPが上がらず、それに伴って(GDP1%程度との制約のある)防衛費も上がらなかった結果、アジアの軍事バランスが崩れ、ウクライナ侵攻に繋がった可能性もあるでしょう。

 日本は、速やかにPB目標を破棄し、きちんと政府支出して経済成長すべきなのです。